・特撮以外の監督にも挑戦したいと考えています。
昨今の映画業界は厳しいものだと思っています。一部の一人勝ち状態を除いて、とにかく儲からない。Netflixとかamazon primeとか、ネットの配信チャンネルが急激に伸びてきて、ビデオレンタルは潰れていって、DVD、Blue-rayも売り上げはよくない。映像はネットでタダで見る、があまりに主流になってしまっては映画がどんどん作り辛くなってしまうし、映像そのものが暇潰しコンテンツばかりになってしまう。
これは極端に考えるとですが、スマホで暇つぶしに動画を見ている人にとって、映像の一般的な尺が5分程度が基準となってしまう。5分で楽しめる映像じゃなきゃいけない。そうなると今度は、お客さんが5分以上の視聴に耐えられなくなっていくという事態になってしまうかもしれないんです。それによって、映画もシークバーで面白いシーンまで飛ばしてしまうなんていうことが起きてしまうと、映画の独特の尺というものが意味を失ってしまう。
つまり起承転結でいうなら、起と結を見るようなものです。あらすじを見ているのとなにも変わらない。映像作品は大体テレビなら1時間、映画なら2時間ほど。その時間全部を含めて一つの作品なんですよ。結なんてのはただの結果で、一番大事なのは承や転だと思うんです。だけど、これからはそんなの意味がなくなっていくかも知れない。時代が変わって技術が進めば、当然どんどん見る側のニーズも変わっていくというのは、注意深く意識しないといけないでしょうね。
さまざまな映像コンテンツを作っていかねばいけない中で、1ついい仕事をやることができました。それが2017年の10月1日から全国のVRシアターでリリースされた『ウルトラマンゼロVR』と『ウルトラファイトVR』です。
今後、VRは伸びてくると思っているんですよ。今でも十分楽しいコンテンツではあるんですが、10年後にはもっといいものになっていると思うんです。今のVRはほとんどのものはCGで作られています。360°作るのは大変なデータ量なので、そこまでのクオリティはまだ出せてないんですね。
これが特撮になると、実在のものを撮っているのでリアリティは保障されているんです。あとはどう撮るかで、すごい没入感得られるんです。この仕事をして以来興味を持ってさまざまなVRのコンテンツを見てみたんですが、現状の中では結構いいものができていたんだなと思いました。一つの違う特撮の可能性が見えた気がしました。
それとはまた別に、アニメの監督もやってみたいと考えています。一番やりたいのは何十億もかけた全盛期のころのような『ゴジラ』なんですけども。現状の映画業界で、実写・特撮では再現不可能なイメージも、アニメーションならばやれるんじゃないかと。
ずっと前から考えていたゴジラの倒し方のイメージがあったんですよ。新宿の都庁がすごい好きで、いつか自分の作品で壊す、と心に決めていたんです。ゴジラを都庁前におびき寄せて、戦車で都庁の根元を撃って、それで都庁を倒してゴジラにぶつけて倒すというやり方をずっと考えていたんですが、『シン・ゴジラ』で先を越されてしまいました。
制限なしに発想するままの描写ができるなら、思いつく限りの面白いビジュアルイメージを実現してみたいですね。
それと特撮に限らず、人間ドラマがメインの映画も撮ってみたいと思っています。今まで撮ってきた作品が特撮作品でしたから当然といえば当然なんですが、周りからの認識は特撮の監督なんですよ。
それはとてもありがたいことなんですが、今の『ウルトラマン』シリーズの監督は、特撮はもちろん人間ドラマパートも担当しているんですよ。それに今でも勉強中ですし、今の実力を試すという意味でも人間ドラマには挑戦したいと常々思っているんです。とにかく仕事幅を広げたい、今はそう考えています。